今夏ボーナス予測、民間38万5458円・公務員65万5464円 昨年より「プラス0.4%」だが、物価が2.0%増では…涙目

ウクライナ情勢悪化に加え、円安の加速が止まらず物価高がどんどん進んでいる。頼みの綱として夏のボーナスに期待をかける人も少なくないだろう。

シンクタンクの「みずほリサーチ&テクノロジーズ」が2022年4月12日、「2022年夏季ボーナス予測~2年ぶりのプラス予想も、物価高が所得を下押し」というリポートを発表した。それによると、民間企業では昨年(2021年)夏のボーナスよりいいのだが、公務員がよくない。さらに、物価高が足を引っ張るという残念な結果になりそうだ。

  • ボーナスがちょっと上がってもなあ(写真はイメージ)
ボーナスがちょっと上がってもなあ(写真はイメージ)

春闘賃上げ率ではベースアップ分が低かった

調査をまとめたのは、みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部のエコノミスト 嶋中由理子氏と、エコノミスト中信達彦氏だ。

2人はズバリ、

「2022年夏の民間企業の1人当たりボーナスは、前年比プラス1.4%で平均38万5458円。公務員は前年比マイナス10.6%で平均65万5464円」

と予測した。

そして、「民間・公務員合わせたボーナス支給総額は、前年比プラス0.4%と小幅な伸びを予想。物価上昇(前年比プラス2%)を踏まえると、実質所得は前年比で減少し、夏場の個人消費の回復を阻害するだろう」と結論付けたのだった。

夏季ボーナス、楽しみではあるけれど…(写真はイメージ)

そんな結論に至った背景を確認していこう。まず、民間のボーナスからみていくと――。

民間企業のボーナス支給額は、時間外手当などを除く1か月当たりの所定内給与に支給月数を掛けて算出される場合が多い。今夏は所定内給与、支給月数ともに増加する見通しだという。所定内給与(6月~8月平均)は前年比プラス0.4%と、小幅な増加を予想するのだ。

その根拠として、2人は春闘の実績をあげるのだった。

「春季賃上げ率(定期昇給+ベースアップ)は、2.11%と前年同期対比でプラス0.29%ポイント上昇している。岸田政権が『新しい資本主義』を掲げる中、自動車、電機、鉄鋼業など大手製造業を中心に満額回答や高水準での回答が相次いだほか、大手流通業などでも前年を上回る回答がみられるなど、現時点の企業の賃上げ姿勢は前向きである」

しかし、この2.11%には1.8%程度の定期昇給分が含まれている。そのため、ベースアップ分は、プラス0.3%程度に過ぎない。結局、所定内給与の伸びはプラス1%に満たない低い伸びにとどまるだろう、と予測する。

また、「支給月数は1.05か月(前年差プラス0.01か月)」と、小幅な伸びを予想した。これは、「(日銀短観3月の回答が)2月下旬以降のウクライナ危機に伴う資源高の急騰の影響を十分に織り込めていない可能性が高く、2021年度の企業収益はさらに下押しされる可能性がある」からだ。

公務員のボーナスはマイナス10.6%予想

今夏、旅行の復活が期待されているが(写真はイメージ)
今夏、旅行の復活が期待されているが(写真はイメージ)

一方、公務員のボーナスをみていくと――。

1人当たりボーナス支給額は、前年比マイナス10.6%と、大幅な減少を予想する。その理由について、「2021年度の人事院勧告において国家公務員の月例給が2年連続で据え置きとなったほか、ボーナス支給月数がマイナス0.15か月(4.45か月から4.3か月に)と大きく引き下げられた」ことなどをあげている。

地方公務員も、国家公務員に準じて給与を決定する自治体が多いため、大幅減となるだろうという。

こうして、ボーナスの支給総額は民間企業が16兆30億円(前年比プラス2.0%)、公務員が1兆9860億円(マイナス10.6%)で、合計17兆9900億円(プラス0.4%)となる計算だ=図表参照

(図表)夏季ボーナスの見通し(みずほリサーチ&テクノロジーズの作成)
(図表)夏季ボーナスの見通し(みずほリサーチ&テクノロジーズの作成)

ちなみに、図表では、民間企業の賞与総額が2.0%増なのに、1人当たりの賞与額が1.4%増にとどまっているのは、業績の改善の伴い、ボーナスを支給される人数が増えるからだ。

2人は、「ウクライナ危機の影響で商品市況の高騰に拍車がかかり、(中略)消費者物価は春以降、前年比2%前後まで上昇する」とみているから、プラス0.4%程度の夏のボーナスの上昇分では間に合わない。実質所得は、かなりの減少となる見込み。2人はこう結んでいる。

「まん延防止等重点措置が解除され、夏場にかけての個人消費は持ち直しが期待される。既に足元では国内線や旅行ツアーの予約が好調との報道もあり、対人接触型サービス消費には持ち直しの兆しがみられる。しかし、賃金(含むボーナス)を上回る物価の上昇が懸念される中、実質所得の減少は夏場の個人消費の回復を阻害する要因になる。感染拡大で落ち込んでいた対人接触型サービス消費の反発を除くと、夏場の個人消費は力強さを欠く展開になりそうだ」

関連記事

関連記事はまだありません。