恋愛における男女差としてよく聞かれる、「男性は『名前を付けて保存』、女性は『上書き保存』」。男性は別れた恋人一人ひとりとの思い出を大切にする一方、女性は新しい恋人ができると過去の恋人との思い出を切り捨ててしまう、という傾向です。
この理論は本当なのか、過去の思い出との付き合い方などについて、心理カウンセラーの園絵先生に伺いました。
■恋愛シーンの数が“保存”方法を左右する
──過去の恋人に対して「男性は『名前を付けて保存』、女性は『上書き保存』をする」とよく言われていますが、この理論は本当なのでしょうか?
「日常的な行動や脳の構造の違いから、このような差異が生まれることがあります。例えば、女性は女友だちとのおしゃべりで恋愛話が話題に上がりやすいですよね。恋愛のアップデートが日々行われ、過去の交際相手の記憶が薄れ、『上書き保存』しやすい傾向があります。
また、女性は本能的に魅力的で優れた男性を見つけると、その新たに現れた男性に気持ちが傾いていく傾向があります。すでにパートナーがいる女性でも、パートナーとの親密度や、恋をしている時に脳内で分泌される『フェニルエチルアミン』が低下すると、恋愛のドキドキを求めて新たな男性に気持ちが傾くと考えられています。
極端な話ですが、マウスを使った実験では、現在妊娠していてもより優れた遺伝子を持つオスが現れた場合、メスのマウスが妊娠を中断し、次の妊娠が可能になる『ブルース効果』というものがあります。人間の女性も妊娠の中断こそないものの、このような傾向が見られるのです」
──男性の場合はどうでしょうか?
「脳の構造上、女性の方が言語能力に優れている傾向があるので、男性は友人同士での恋愛話が少ないです。また、統計的に男性は女性よりも恋愛経験が少なく、一回一回の出会いを大切にする傾向があり、交際を終えた後に喪失感が生じます。そうして、一人の女性の記憶が『名前を付けて保存』されるのです」
■女性の方が現実的!? 個人差という考え方も
──男性は思い出を美化しやすいということですね。
「女性の方が現実的で、思い出よりも現在を大切にします。女性は脳の中で、感情や言語を司る脳梁や偏桃体、海馬という部位が男性よりも発達していると言われています。言語能力の発達によって、女性は現実的な発想が多く、過去を美化するよりも新しく素敵な出会いを求める傾向があるのです」
──男女差ではなく、単なる個人差であるということも考えられますか?
「やはり個人差はあると思います。恋愛する機会が滅多にない内向的思考の方は、一度の熱い恋愛を『名前を付けて保存』しがちです。一方、別れた後も出会いの機会が頻繁にある外交的思考の方は、失恋してできた心の穴を新しい恋人が埋めてくれるので、必然的に『上書き保存』しやすいでしょう」
■思い出は次の恋愛に活かそう
──過去の記憶や思い出に浸ることは良いことなのでしょうか?
「良い面もあります。楽しかった記憶を思い出し、心の緊張が解放されることで心が温かくなる『ノスタルジア』は、過去の記憶に浸ることのメリットです。ただし、自分が輝いていたころと満たされていない現実との差にショックを受け、落ち込んでしまうこともあるので、注意が必要です」
──過去の記憶や思い出との上手な付き合い方を教えてください。
「まず、記憶の中のマイナス要因を払拭するようにしてください。過去を思い出し、落ち込んでしまうのであれば、それは過去の記憶を無意識に悪いものとして扱ってしまっているということなので、なるべく思い出さない方が良いでしょう。
また、過去の記憶は教訓を得られるものでもあります。経験から学び、次の恋愛にどんどん活かすと良いと思います」
記憶の留め方には男女差や個人差がありますが、それをどう活かすかは自分次第です。苦い記憶はそっとしまい、幸せな記憶で心を温めて、今を生きるパワーに変えてみてくださいね。