人間は汗をかくことで体温を一定に保っています。しかし、現代人はエアコンの普及により、汗をかく機会が少なくなっています。汗をかかなくなると交感神経のはたらきが鈍り、体温調節機能がはたらきにくくなって、夏バテの原因の一つである自律神経失調症になりやすくなります。
また食生活でも、糖分の多い清涼飲料水の摂り過ぎによる食欲の低下や、消化吸収能力の低下がみられます。とくに夏はビタミンやミネラルなどの栄養素が摂りにくくなり、これらが原因で夏バテが起こるといわれています。
暑さに慣れると汗の出始める気温や体温が低くなり、汗の量が増え体温は上がりにくくなって、暑さに対する耐性も高まります。これは短期暑熱順化と呼ばれています。現代人が快適さと引き替えに、本来、身体に備わった能力を発揮できないライフスタイルを選んでいることも夏バテの一因といえそうです。
1 ほとんど1日中エアコンの効いた部屋にいる
2 夏でもあまり汗をかかない
3 普段から運動不足だ
4 水代わりに糖分の多く含まれた清涼飲料水を飲む
5 欠食することが多い
6 毎日、間食をする
7 外食が多い
8 食生活は加工食品が中心だ
9 昼食はそうめんなどで軽くすますことが多い
10 疲れがたまりやすい
チェックが4~6個 要注意
チェックが7個以上 危険!
夏バテの要因となっているエアコン
サラリーマンは背広を着ていることもあり、強い冷房を要求しがちです。身体の冷えから血行不全、腰痛、肩こりなどを起こすことも少なくありません。
冷えからくるだるさには、入浴や適度な運動により血行をよくすることが効果的です。このような症状を防止するためにも外気温と室温との差は5℃ぐらいに留めておきましょう。
夏をイメージする食べ物は夏バテ予防に効果的?
夏の食事はサッパリしたものになりがちです。「土用の丑の日」にビタミンA、B1が多く含まれる鰻を食べる習慣は理に適っているものなのです。
また、日本人にとって元祖エスニック料理といえばカレーです。私たちはインド人に次いでカレーを食べている国民だそうです。
ピリ辛料理は血行を良くし、発汗を促し新陳代謝を盛んにします。冷房の冷えにより起こったむくみやだるさといった症状も、新陳代謝の回復により徐々に改善されます。
さらに、スパイス類は胃を刺激し、胃酸の分泌を多くし、食欲を増進させ、さらに消化も促進させます。暑い地域に暮らす人たちの食習慣も科学的な根拠にもとづいたものなのです。
夏バテ予防、それは食生活から
ビタミンは身体を調節するために大切な栄養素です。夏バテ防止に役立つビタミン類が多く含まれる食品を積極的に摂るようにしましょう。
ビタミンB1
ビタミンB1は、糖質や脂肪が身体の中でエネルギーになるとき、いわば、潤滑油としてはたらきます。清涼飲料水1缶(350ml)には、約30gの砂糖が含まれているので、清涼飲料水を多く摂りがちな夏は、いつもより多くのビタミンB1が必要になります。
ただし、ビタミンB1には即効性はありません。つまり、疲れやすくなったりだるくなってからあわててビタミン剤やドリンク剤を飲んだり、食事に気を配ってもすぐには疲労回復効果が期待できません。
日頃から各栄養素をバランスよく摂るよう心がけましょう。また、ニンニク、ニラ、ネギなどは身体の中でビタミンB1の利用効率を高めますので、ビタミンB1の豊富な豚肉などと一緒に調理すると効果的です。
ビタミンC
最近では、暑さだけではなく室内と屋外の温度差という新たなストレスも加わっています。そんなストレスに対する抵抗力の強い身体づくりにかかせないビタミンのひとつに、ビタミンCがあります。
ビタミンCはたんぱく質と一緒に摂ると、体細胞をつないでいるコラーゲンを作り、さらに免疫力も高めます。朝1杯のトマトジュースや柑橘類のジュースの習慣は、身体を目覚めさせるとともに、ストレスに負けない身体づくりにも効果的です。
積極的な水分補給も必要
炎天下を10分間歩くと100g程度の汗をかくといわれています。一般的に発汗中や発汗直後に強い渇きは感じません。したがって、のどの渇きを目安に水分を補給しても、失った水分量に比べ少量しか補給されません。
「水分を摂ると汗が出るから摂りたくない」という人がいますが、脱水症状を起こさないためにも、水分の積極的な補給が大切です。とくに、高齢者は体内の水分量が減っているので脱水症状を起こしやすく、注意が必要です。
それでも夏バテで食欲不振になってしまったあなたに
食欲がなくなると必要な栄養素が十分に摂れずに、バテてしまいます。鶏肉や白身魚は消化がよいので、消化機能の低下している夏向きの食品です。シソやミョウガなど旬の香味野菜で香り付けをしたり、柑橘類の酸味をきかせて、消化液の分泌を促進します。
くずやゼラチンな どを使ったのどごしのよい料理もおすすめです。また、いくら暑いからといって、すべての料理が冷たいものでは感心し ません。
血行を良くし新陳代謝を高めるうえからも、1品は熱い料理を取り入れましょう。中途半端な温度の料理は食欲を減退させます。熱いものは熱く、冷た いものは冷たくしていただきましょう。