■いかなる理由があっても女性は土俵に上がれない
古くから、土俵の上は神がいる場所とされてきた。 今でも、本場所の前々日には、出雲大社教神官の神事が執り行われる。また、前日には土俵祭が行われる。横綱の土俵入りは、四股によって邪悪なものを踏み鎮める、いわば“地鎮祭”と同じ意味を持つものとされている。
このようなことから、土俵は神聖な場所とされ、古くから女人禁制となっているのだ。ただし、地方によっては子ども相撲などに女性も参加しているので、この習慣は崩れつつある。
■女性が土俵に上がるハプニングで伝統が崩壊!?
2007年の秋場所で、女性が土俵に上がるハプニングが発生。ジーンズにTシャツ姿の中年女性が土俵に上がる姿が全国に放送され、会場内は一時騒然となったが、まわりにいた親方や力士などが女性を土俵から引きずり下ろして一件落着。取り組みが再開されたが、その後、女性は警察に連行された。
この事件の後、相撲協会は「女性は土俵には上がっていない」旨の声明を発表。これにより、長年にわたって守られてきた「土俵は女人禁制」のしきたりが守られたことを強調している。
■太田房江大阪府知事が土俵上でトロフィーを渡すことを相撲協会が拒否
2000年には、太田房江大阪府知事の「土俵に上がり自分の手で優勝トロフィーを渡したい」という要求を、日本相撲協会が拒否したこともある。結果、代役の男性が土俵に上がり、優勝トロフィーを手渡している。翌年の2001年も同様に、太田房江知事が土俵に上がってトロフィーを手渡すことを熱望したが、やはり叶わなかった。
これに対して世間からは「男尊女卑だ」「伝統を守るべきだ」などの声が多数あがるとともに、新聞やテレビなどのメディアで連日報道がなされた。
さらに遡ること1978年、「わんぱく相撲」で勝ち進んだ10歳の少女が、国技館の土俵に上がることができず、決勝大会への出場を泣く泣く諦めた一件もある。これに対して、当時の労働省婦人少年局長を務めていた森山眞弓氏が指摘し、日本相撲協会の理事と話し合いを行ったものの、くつがえることはなかった。
■土俵の女人禁制は女性差別なのか、それとも伝統を守るべきなのか?
この問題は幾度となく議論の対象となってきたが、いまだ決着は付いていない。
横綱審議委員会の委員を務めた経験のある作家の内館牧子氏は、「伝統の“核”をなす部分の変革に関しては、当事者にのみ委ねられるべき」と述べている。そして、これは大相撲に限った話ではなく、すべての伝統において当てはまる、と続けている。
宝塚を例に挙げると、「男女平等に舞台にあげるべき」と訴えたところ、それが受け入れられたとしよう。はたしてそれは本来の宝塚であると言えるのだろうか。答えは、否だ。
大相撲の女人禁制は長年守られてきた伝統であるがゆえ、女性差別で解決する問題でもないようだ。
■まとめ
古くから議論がなされてきた大相撲の女人禁制。 この戦いに終止符が打たれる時はくるのだろうか?